竹の子山

jaumajimura2009-05-08

薄暗い裏山。
「近頃、スネが痛うてねぇ」というチエちゃんは
その痛みはどこへやら、
すたこらさっさと、急な斜面を進んで行きます。
少し、進むと
「あった、あった」と、大きな声。
チエちゃんの指の先には
そりゃぁ、大きな竹の子がズンっと居座っておりました。


「うわー、いっぱい生えちゅうやいか。
 あっちも、こっちも、ほらそこにも。
 まぁ、おいしそうながぁがあるぅ。
 みてん、ほら、この大きいこと」と、
 大興奮のチエちゃん。

「え?どこ、どこ?」
と若者が探しているまに、
スタスタと現場へ駆け上がり、
クワをブンッとふりかざします。
「たくましいねぇ、チエちゃん」と若者はぽつり。
「ははっ、そりゃぁ山の人間やもの」と。



あんまりにも大量に採れたので
持ってかえるのも一苦労。
「とてもやないけんど、持てんきね、転がしもって帰らんと」と、
竹の子が次々と頭を先頭にビュンっと山をすべっていく光景は
まるでロケットのようです。
この時期は
竹の子ロケット注意!そんな看板がいるかもしれません。


「皮はゴミになるきね、ここで剥いでいこう」と、
山の中で皮剥ぎがはじまりましたが
それらはあまりにも大きいので
まるで獣の解体のよう。

パリパリッと皮をめくると
黄色くやわらかそうな身と、ぷーんと竹の子のやさしい香りが山中にひろがりました。
「一見、こんな大きな竹の子は固くて食べれんと思われがちやけんど、
ここの、今時のがぁはそんなことはない。
やわらかくて、ほっぺたがおちるでぇ。
ちっと固いかなぁと思うがはね、天日干しにするが」と。



「今から炊くきね、夕方頃とりにきいや」
そういうと、
チエちゃんは一輪をついてさっそうと帰っていったのでありました。 

おしまい